山出の取り組み内容

1.地域包括ケアシステムをふまえた新地域支援事業の推進

平成12年(西暦2000年)4月1日

介護保険制度がスタートしました。福祉サービスの利用が措置から契約に大転換した日です。

私は、その1年前に1冊の本「体験ルポ 世界の高齢者福祉」を読んだことがきっかけで、旅行会社の営業マンから高齢者福祉の世界に飛び込んだのでした。それ以降、今日までの約17年間、主にソーシャルワーカーとして直接的、間接的に介護保険制度に関わり続けています。

【新地域支援事業】注:「私たちが描く新地域支援事業の姿」(中央法規)より
介護保険制度は、基本的に3年ごとに大きな見直しが行われています。平成26年の改正では、消費税財源を活用して、「在宅医療・介護連携推進事業」、「認知症総合支援事業」、「地域ケア会議推進事業」、「生活支援体制整備事業」の4つの事業が地域支援事業内に新たに設けられたほか、平成24年改正で創設され市区町村の選択により実施されてきた「介護予防・日常生活支援総合事業」を見直し、全国一律の予防給付(訪問介護、通所介護)と介護予防事業を再編成した、新しい「介護予防・日常生活支援総合事業」を全市区町村が実施することとなりました。
 これらの事業は平成27年4月より実施するものですが、市区町村が条例で定める場合は、新しい総合支援事業は平成29年4月、これまでも包括的支援事業で実施されていた地域ケア会議推進事業を除く3事業は平成30年4月まで猶予可能とされています。
また、今回の地域支援事業の充実は、地域包括ケアシステムの構築を目的に行われたものと説明されています。

【地域包括ケアシステム】注:「私たちが描く新地域支援事業の姿」(中央法規)、厚生労働省資料より
慶応義塾大学の田中滋名誉教授が座長を務める地域包括ケア研究会において「ニーズに応じた住宅が提供されることを基本とした上で、生活上の安全・安心・健康を確保するために、医療や介護のみならず福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で適切に提供できるような地域での体制」と定義されています。
 また、地域包括ケアシステムの構築については、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される体制を実現するとしています。

上記の取り組みを確かなものにするためには、関係施設や事業所に加え、地域住民(地縁組織)の方々の理解や、協力が欠かせません。また、それぞれの地域の事情をふまえた、丁寧な積み重ねが求められます。また、全国の他市区町村の成功事例に学ぶことも大切です。

2. 認知症の人とご家族を支えるシステムの構築と推進

【私自身のこれまでの大まかな取り組みの流れと、今の考え】

平成11年

高齢者福祉の世界に転職した際、「呆け老人をかかえる家族の会」(現、認知症の人と家族の会)に入会、以来、福祉現場で働く者の立場で奈良県支部「家族の集い」「リフレッシュ旅行」などに参加させていただいています。

平成13年5月/平成15年10月

「痴呆性老人を抱えた家族の問題を身近なこととしてとらえ、考える」きっかけづくりを目的に開催した映画会の企画、運営を担当、合計4回の上映で、約1,500人の方々がご覧になりました。

◇作品名:「ホーム・スイートホーム」/「ホーム・スイートホーム2」
◇主 催:特定非営利活動法人この指とまれ21

平成16年

国際アルツハイマー病協会、第20回国際会議・京都・2004「高齢化社会における痴呆ケア」に参加しました。

平成20年10月

認知症の人と家族への援助をすすめる第24回全国研究集会:奈良から発信「発見からターミナルまで切れ目のない支援を!!」~本人家族地域保健医療福祉すべての連携をめざして~の計画から実施まで(約1年間)実行委員の一人として参画しました。

平成27年7月

までの約10年間、実父の介護に献身的に取り組む妻を力不足ながら支えました。すばらしい人格も兼ね備えられた老年精神科の開業専門医、総合的に関わってくださった総合病院の主治医、家族同様にかかわってくださったケアマネ、介護保険事業者さんなどとのご縁のおかげで、最期まで自宅で生活することができました。 まさに、私たち家族は本当にたくさんの方々に支えていただきました。心から感謝しています。

様々な啓発事業(認知症サポーター養成講座など)の実施などにより、認知症はずいぶん身近なものとなり、理解も進みました。また、医療面の対応や、福祉支援の体制づくりなども少しずつ進んでいます。ただ、まだまだ十分ではありません。私の身近なところにも、認知症の方が何人かおられます。ご家族共々、日々の生活に困っておられる方があります。それぞれに必要な支援が届くよう取り組みを積み重ねていく必要があります。

平成29年4月

国際アルツハイマー病協会、国際会議・京都・2017が開催されました。

3. 障害者優先調達推進法の啓発と推進

平成25年4月1日から施行された法律です。

【法律の要旨】注:厚生労働省資料より
 障害のある人が自立した生活を送るためには、就労によって経済的な基盤を確立する ことが重要です。このためには、障害者雇用を支援する仕組みを整えるとともに、障害 者が就労する施設等の仕事を確保し、その経営基盤を強化することも必要です。
 このような観点から、これまで障害者就労施設等へ仕事の発注に関し、民間企業をは じめ国や地方公共団体等において様々な取り組みが行われてきました。
 「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(障害者優 先調達推進法)」は、国や地方公共団体等が率先して障害者就労施設等からの物品等の 調達を推進するよう、必要な措置を講じることを定めたものです。

平成28年12月31日

まで、私は4年半の間、主に知的障害のある方々を支援する社会福祉法人青葉仁会で営業部長・就労支援部長を務めさせていただきました。この間、上記法律の要旨に照らして、各事業所でつくられた商品の販売も手掛けましが、行政組織においては、担当部局(障害福祉関係)以外での認知度が低く、なかなか成果につながりませんでした。様々な事情もあるなかで、法律の啓発と実践の工夫、積み重ねが求められます。

4.成年後見制度の啓発と市民後見人の育成推進

平成12年(西暦2000年)4月1日

民法が改正され、成年後見制度がスタートしました。 端的に言うと、この制度の目的は「公平な取引」を護ることです。


【私自身のこれまでの大まかな取り組みの流れと、今の考え】

平成20年

日本社会福祉士会成年後見人養成研修を修了後、平成21年~24年の3年あまりの間、認知症のお年寄りの保佐人を務めさせていただきました。

平成23年・24年・27年

青葉仁会利用者のご家族を対象に、研修会の企画・開催を担当しました。

テーマ:「成年後見制度の今」を一緒に学びましょう~親なき後を誰に託しますか?~のPARTⅠ・Ⅱ・Ⅲとして開催。

平成25年10月

青葉仁会とさつき会(青葉仁会利用者の家族会)が合同で「親なき後を考える会」を設立し事務局の主担当を務める。約1年間、親なき後の利用者の権利擁護のあり方等について、意見交換会や研修会を実施。

平成26年12月

奈良市市民後見人養成講座の受講者の現場実習受け入れを担当

平成28年3月1日

特定非営利活動法人あうんの会が奈良県の認証後、法人登記の手続きを済ませました。知的障がいのある人の、親なき後の受け皿の選択肢のひとつとして設立した法人ですが、最初の準備段階から現在に至るまで、事務局を担当しています。

☆上記以外にも、様々な取り組みに参画、関係団体、機関との連携、協力の調整などを とおして、数々の貴重な経験をさせていただきました。

成年後見制度がスタートして間もなく17年になります。受任件数は緩やかに増加していますが、当初の想定より、後見に比べ保佐や補助の受任件数が非常に少ないことや、第三者後見が増え、専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)による受任は飽和状態になっているなどの状況があります。 また、誰にとってもいずれは関わりが必要となる制度であるのに、まだまだ一般の方々には無関係なものとなっています。 様々な連携、協働の下で、今後もさらなる制度の啓発と新たな後見人の育成などを計画的に積み重ねていく必要があります。

5. 地域に根差した子育て支援事業の推進

 平成28年9月、奈良市で主に子育て支援の分野でフロントランナーとして活躍されていた一人の女性が、若くして急逝されました。

 私はその方と、遡ること平成11年10月13日に新まほろば未来塾(奈良県主催のまちづくり塾)入塾式で出会い、約2年間共に学び、卒塾後も緩やかなつながりを持ちながら、それぞれの分野で地域福祉に携わってきました。大切な同志を失い、言葉では言い表せない思いがあります。多くの方々が同じような思いでおられることと想像しています。

 同年3月、彼女から概ね次のような話を聞きました。「以前までは、子育て中のお母さん方は、同じような境遇の人同士が集まって、悩みを打ち明けたり、お互いに協力しあったりというスタイルが主流だった。でも最近は、自分が生活する地域の身近なところにそれらを求める人が増えているように感じる」と。長年にわたり、子育て支援の現場で丁寧な取り組みを積み重ねてこられた彼女の言葉が、今もしっかり残っています。

 平成28年3月に作成された「奈良市児童虐待再発防止訪問型支援システム事業報告書」の中に、事業実施の際に行った「子育て家庭アンケート調査」結果の分析報告として次のような件があります。
※一部抜粋「子育てに関する相談相手は、配偶者、友人や実母などがあげられているが、地域との関わり、つながりがまだ希薄であるという声が聞かれた。

今後、地域支援を充実させていくためには、民生委員・児童委員(特に児童民生委員)の方々、つどいの広場、地域子育て支援センター、地域の保育所や幼稚園などにおいても、子育てなどの相談窓口であることをアピールしていくことと共に、地域においても子育て支援体制などを整備し、地域の一員としての関わりや地域一体となった子育て支援を進めていく必要があると考える。

今まさに、地域に根差した子育て支援の仕組みづくりを丁寧に積み重ねていく必要があります。

6.地域防災システムの構築と推進

【私自身のこれまでの大まかな取り組みの流れと、今の考え】

平成7年1月17日

阪神・淡路大震災が発生

平成12年9月2日

三宅島噴火(6/26発生)後、全島避難指示

平成15年

療養型病院の主任医療福祉相談員として、地域との関係を構築していた当時、ある方から、赤い線があちこちに書き込まれた地図を見せてもらいました。それは、奈良盆地東縁断層帯だったのです。全く知らないことでした。その時から、地域防災を地域福祉の視点から考えるようになり、以下のとおり取り組みを積み重ねています。

平成16年10月23日

新潟県中越地震が発生

平成19年3月25日

能登半島地震が発生

平成19年7月16日

新潟県中越沖地震が発生

平成19年8月

講習を修了し、「防災士」の認証を受ける

平成20年~

日本災害復興学会の正会員

平成20年~

奈良県社会福祉士会地域防災推進委員

平成21年1月17日

地域防災フォーラム2009in奈良「大震災に備える」を考える ~奈良県における大震災を想定した被災者支援体制構築に向けて~の企画・運営を担当/主催:奈良県社会福祉士会/共催:奈良県

平成22年1月24日

地域防災フォーラム2010in奈良「大震災に備える」を考える PARTⅡ~阪神・淡路大震災から15年、被災現場の教訓に学ぶ~の企画・運営を担当/主催:奈良県社会福祉士会/共催:奈良県

平成22年11月~

2期2年3ヶ月間、六条校区自主防災防犯会副会長(事業企画担当)

平成23年2月27日

六条地区防災フォーラム2011「大震災に備える」を考えるPARTⅠ~阪神・淡路大震災から16年、被災地の教訓に学ぶ~の企画・運営を担当/主催:六条校区自主防災防犯会

平成23年3月11日

東日本大震災が発生

平成23年3月26日

日本災害復興学会の第8回震災障害者法制度研究会において講師を務める。演題「復興士の可能性」

平成23年5月1日~5日

奈良市の被災地支援・ボランティアバスに参加・気仙沼市で住宅の後片付けなどに従事する。現場の状況には大きなショックを受けました。同時に、気仙沼市災害ボランティアセンターの機能に、被災地におけるボランティア受け入れ体制構築の重要性も学びました。

平成24年2月26日

六条地区防災フォーラム20112「大震災に備える」を考えるPARTⅡ~六条地区において直下型地震:震度7への具体的な対応準備を始めよう~の企画・運営を担当/主催:六条校区自主防災防犯会

平成24年~

奈良県防災プラットホーム定例会議に出席(奈良県社会福祉士会担当として)

平成28年4月16日

熊本地震本震が発生

平成28年7月2日~3日

福島県田村市で、福島原発からの避難指示解除になった地区の取り組み、思い、復興支援隊の活動などに学ぶ現地研修に参加(日本災害復興学会企画)

生活の全てが非日常になってしまう大規模災害。その状況を想定し、災害時要援護者のデータの有効活用と安否確認の準備、地域の様々な事情をふまえた具体的な避難の方法、建物の安全確認の方法、避難所の運営、ボランティアの受け入れなど、それぞれのシステムの構築を切れ目なく、同時進行で積み重ねていく必要があります。

7.農福連携の仕組みづくりと推進

「農福連携」は、障害者福祉における昨年の流行語と言えるぐらい、しばしば目にした熟語です。厚生労働省も重要施策として、様々な取り組みを進めています。

 私が勤めていた法人でも、障がいのある利用者の仕事として、30年以上、農業に取り組んできました。素人だけではうまく進まないこともありましたが、地元農家の方々などから様々なご支援、ご協力をいただき、今では利用者の仕事として定着しています。 施設が立地する奈良市の東部山間地域では、農業従事者の高齢化や後継ぎ不足などで耕作放棄地がたくさんあります。最近は「田んぼや畑を代わりにやってほしい」と依頼されることも増えてきています。

 そのような中、昨年、東日本大震災の被災地を支援するプロジェクト(復興支援チョコ)でご縁があった、NPO法人関西ワンディッシュエイド協会の理事長さんより、農福連携の新たなモデル事業のご提案がありました。  その名も「大和さつまいもプロジェクト」。概要は、サツマイモの作付け~収穫~洗い~選別~パッキング~納品~請求・支払い、流通などのシステム構築と奈良県産サツマイモのブランド化、及び、お菓子や、加工食品の製造販売などをトータルでコーディネートするというものでした。 それぞれに、異なる機能や強みを持った企業、NPO法人、社会福祉法人などが連携・協働して初年度はスタート、障がいのある方々もそれぞれ役割をもってこのプロジェクトに参画しました。秋には初めての収穫、なんとか納品を終えました。 今後は毎年の成果を検証して、取り組みを積み重ねていくことになります。道のりは簡単ではありませんが、夢と実現性が共存するプロジェクトだと感じました。

 地域の活性化、多世代間交流、耕作放棄地の再生、地産地消、地域ブランド商品の開発、伝統野菜の復活・伝承、障がいある方々の自立生活などなど、「農福連携」の取り組みには、ロマンと可能性を感じます。そして、成功のためには、地域に根差した地道で丁寧な取り組みの積み重ねが重要だと思います。